企業研究者、たまにはこんなブログ記事を書いてみては。

メインブログにこんな記事を書いた。

「ハエの踊りと新薬開発」
http://kentapb.blog27.fc2.com/blog-entry-1833.html

簡単に内容を紹介すると、こんな感じ。


ショウジョウバエの変異体のなかに、変な挙動(エーテルを嗅がせると踊るようなしぐさをする)をするものがいて、その変異の原因遺伝子は、あるカリウムチャネルをコードするものだった。このチャネルの発見は、カリウムチャネルの体系化には役に立ったが、生理的意義ははっきりしていなかった。


数十年後、このカリウムチャネルのホモログがヒトにも存在することが判明し、hERGチャネルと命名される。そして、市販薬の心臓に対する副作用(致死性不整脈)の原因が、このhERGチャネルあることが判明する。hERGチャネルの評価は、医薬品安全性評価の必須項目となり、医薬品開発の方向性は大きく変わった。


基礎研究と応用研究をつなぐエピソード、というお題での記事である。


このような記事は、基礎研究の研究者が書けそうに思えるが、実際のところは応用研究を行なっている企業研究者の方が書きやすいのではないかと思う。自分が担当している製品には、かならず多くの基礎研究がつかわれている。自分の研究を進めるためには、基礎研究についての知識は必須であり、そのなかで現在の応用技術とのつながりは自然に見えてくるはずだ。


私が好きなブログのひとつに「有機化学美術館・分館」がある。このブログの管理人である佐藤健太郎氏は、現在は東大の教員として化学の普及活動にあたったり、サイエンスライターとして多数の著書を著している。

有機化学美術館・分館
http://blog.livedoor.jp/route408/


もともと、佐藤氏は製薬会社の研究員であり、研究活動の傍ら、多くの有機化学関連の記事をホームページやブログに掲載されてきた。美しいCGによる化学構造式をバックに、基礎的な有機化学の話から、生活・医療に結びつく化学物質の話まで、その話題の詳しさと豊富さはすばらしいものがある。


この知識の多くは、佐藤氏の研究活動の中から体感として得られたものと思われる。応用研究をしているからこその基礎研究の面白さ・大切さを、絶妙なタッチで現す手腕は、いつ見ても凄いと思う。


企業研究者は、自分のもってるバックグラウンドを元に、もっといろんなアピールして目立ってもいいと思う(もちろん守秘義務は守らねば行けない。あくまで、一般論、公知の範囲のレベルで)。製品を世の中に送り出すのは一番大事な仕事だが、現在いろいろと苦労している基礎研究の応援団としては、企業研究者は最適な存在だとも思うのだ。


私も、微力ながらその中に加わろうと思っている。


メインブログはこちら
薬作り職人のブログ
http://kentapb.blog27.fc2.com/