危険をもたらす使い方を認識する、ということ。

リスクとベネフィットという言葉がある。

創薬に携わる人間にとっては基本中の基本の言葉である。これをしらない・この感覚を持たない人間は、創薬をしているとはいえない。

私は薬理評価を担当しているが、ベネフィットである薬効を活かすためには、リスクをできるだけ把握することが必要であることを、いつも実感している。リスクを見逃すのが恐いのはもちろんであるが、リスクを必要以上に過剰に見積もることで、大きなベネフィット(もちろん患者さんに取っての)を持つ薬がドロップしてしまうことも非常に怖い。

車や刃物などのように、危険な道具は世の中に沢山あるが、みんなが当たり前のように使っているのは、使い方を誤ったときにどんな危険があるか、皆が把握しているからだ。危険をもたらす使い方をきちんと認識していれば、その使い方を避けることで危険も避けることができる。

薬も同じこと。リスクや副作用が把握できている薬は、危険をもたらす使い方が認識されているということ。つまり、危険そうに見えてじつは安全性が保証されているのだ。