製薬会社の化合物ライブラリーとアカデミアの化合物ライブラリー

製薬会社には、新薬スクリーニング用の化合物が貯蔵されている。これを化合物ライブラリーと呼んでいる。メガファーマになると、その数は100万のオーダーになるらしい。

また、最近では、東大や理化学研究所でも数万個単位の化合物ライブラリーを所有し、アカデミアへの供給を行なってるようだ。製薬会社に断られたので、自前で用意した、ということらしい。

ライブラリーの由来は、自分達で合成して来た化合物にくわえ、いろんな試薬メーカーから購入した化合物、微生物などの生物から採取した天然物、、

その特徴をひとことでいうと、

  • 製薬会社の化合物ライブラリーは、スマートでエリートぞろい。ただ、みんなどこか似ていて、個性がないのっぺらぼう。
  • アカデミアの化合物ライブラリーは、無骨で、不格好で扱いにくいけど、強烈な個性派ぞろい。

製薬企業の場合、100万もあるとまさに玉石混淆である。この中から、ランダムスクリーニングによって、新薬の種(シード化合物、リード化合物)を探し出し、ここから化学合成で手を加えることで、生物活性や体内動態の性能を磨き上げて行く。

しかし、シード化合物やリード化合物がみつかったとしても、薬にしにくい化合物と言うのはやはり存在する。これ以上、いじるところがない。天然物だと、複雑過ぎてどうしようもない、、

というわけで、大量のライブラリーのなかから、薬に使えそうな構造(Drug likeナ構造)をあらかじめ選び出すという作業を行うことがある。多少の活性は見逃しても、その後の化学合成での扱いやすさを考えると、最初からややこしい化合物は抜こうという考えだ。もちろん、天然物指向の創薬も行なわれてはいるが、主流というにはほど遠いような気がする。

一方、アカデミアでのライブラリーの特徴は、天然物が多いせいもあるのだろうが、製薬企業にとっては扱いにくくて困る「分子量が大きくて複雑な化合物」をそろえている、ということだ。

このライブラリーは、細胞機能を研究するためのツール化合物を探索するためのものなので、化学合成によって磨きをかけるという必要性がそれほどない。とにかく、活性が強ければなんでもいいという考えである。それもまた一理、である。

製薬会社の中の人間は、「試薬を作ってるんじゃない、薬をつくってるんだ」ということをよくいう。その言葉が、ライブラリーの性格に見事に現れている。