高選択的COX1阻害薬TR-L-382

現在、米国で行なわれている学会のアブストラクトを検索していて見つけた演題に、「高選択的COX1阻害薬TR-L-382」というのがある。

COX阻害薬の副作用としては胃潰瘍などの消化器潰瘍があまりにも有名だが、この発表では胃潰瘍が起きにくいCOX1阻害薬について報告されている。東レの医薬研からの発表だ。

http://www.abstractsonline.com/Plan/ViewAbstract.aspx?sKey=ce7bfc0f-3ced-41c6-b5fb-58ac472d0255&cKey=5a8e6c88-96bc-4a67-b93d-8539202cb8eb

COX阻害薬の抗炎症作用は、2種類あるCOX(COX1,COX2)いずれを阻害しても認められる。一方、COX阻害薬による消化器潰瘍は、教科書的には、消化管に存在するCOX1の阻害が原因だとされている。そのため、消化器潰瘍を起こさないCOX阻害薬として、1990年代にCOX2選択的阻害薬が精力的に開発され、臨床で用いられるようになった。しかし、一部のCOX2選択的阻害薬に心筋梗塞などの心血管系リスクが指摘され、現在では昔ほどの輝きをなくしている。

そんな中、胃潰瘍を起こさない高選択的COX1阻害薬を開発するという逆転の発想は目を引いた。この演題では、神経因性疼痛モデル動物に対する鎮痛効果が示されている。一方、正常動物で胃潰瘍を全く起こさない、のかどうかはこの発表では示されていないが、少なくとも他のCOX1阻害薬のように胃潰瘍モデル動物での胃潰瘍を増悪させる、ということはないらしい。

果たしてどのようなメカニズムで胃潰瘍が起こりにくくなっているのか。いろいろ突っ込みどころ満載のデータ、、のような予感がする。こういうとき、実際に学会に行って生の声を聞きたくてたまらなくなるんだよな。。