DPP4阻害薬のチキンレース

日本初のDPP4阻害薬「ジャヌビア」「グラクティブ」(ジャヌビアは万有製薬、グラクティブは小野薬品、いずれも主成分はシダグリプチンリン酸塩水和物)が製造販売承認を取得した。アメリカに遅れること3年。アメリカではすでにブロックバスターとなっている糖尿病治療薬が、ようやく日本に登場である。

DPP4は、インスリン分泌を刺激する消化管ホルモン「GLP1」を分解する酵素である。ジャヌビアは、DPP4を阻害することにより、GLP1の量を増やして作用を増強し、インスリン分泌を高める作用を持つ。

古典的な血糖降下剤であるSU剤(スルフォニルウレア系薬剤)では、血糖値の値にかかわらず無理矢理インスリンを分泌させるので、低血糖などの副作用が問題になっていた。一方、GLP1は、血糖値が高くないとインスリンを分泌させない。そのため、正常血糖に近い状態では、DPP4阻害薬を服用してGLP1の量が増えても血糖値は低下することはない。

というわけで、DPP4阻害薬は非常に扱いやすい血糖降下剤として期待され、案の定、海外では大人気である。他社も競ってDPP4阻害薬の開発を行っている。

ただ、糖尿病治療薬の世界では、長期服用時の安全性(心血管系リスクなど)が厳しく問われる時代になっている。現在、海外ではすでに3種類の薬剤が承認されている。これ以降のDPP4阻害薬の開発においては、FDAなどの審査が非常に厳しい。日本勢では、武田薬品が検討しているが、もう一息というところでFDAのストップがかかった。

出遅れた製薬メーカーにとって、上市にたどり着くまでには相当のリスクの覚悟が必要である。さて、これからのチキンレースに勝つのはどこか、見守りたい。

参考までに、ジャヌビアの名前の由来のリンクをあげておく。

糖尿病の新薬「ジャヌビア」の名前の由来。
http://kentapb.blog27.fc2.com/blog-entry-1801.html