ノーベル生化学賞。

今年のノーベル化学賞は、「for studies of the structure and function of the ribosome」に対して与えられた。タンパク質合成に関わる細胞内器官「リボゾーム」の構造と機能解析、というのが受賞内容である。

これは、高校の教科書で言えば、化学の教科書ではなく生物の教科書に載っている内容だ。確かに生化学も化学の一分野ではあるが、化学をメゾトロジーとして使っているだけであって、「化学そのもの」とはなかなかとらえにくい。

しかし、ノーベル賞選考委員会は生化学が好きなようで、1970年代以降、生化学のノーベル化学賞に占める割合は非常に高くなっている。まるで、ノーベル医学生理学賞に入りきらない功績が、化学賞に流れ込んでいるような気もする。そういう点では、ノーベル生化学賞なんてのがあってもいいのかもしれない。

さて、今年のノーベル物理学賞では、「光ファイバー」や「CCD」などの、現在のデジタルライフに欠かせない基礎技術が受賞している。物理学の進歩発展に貢献した、というよりは、ヒトの生活に役立つものを作ったことに対する貢献を重視したようだ。

ノーベル化学賞も、そろそろこういう基礎技術に注目してもいいのではないか。私のつとめている製薬業界でも、「この有機合成反応・この触媒がないと商売あがったり」という革命的な基礎技術は存在する。現に、野依良治氏は「不斉触媒」という、現在の有機合成に欠かすことができない技術の発明で、ノーベル化学賞を受賞している。

有機化学だけでなく、材料化学や環境化学などで、まだまだノーベル賞の日が当たっていないネタは多いはず。来年は、これらの分野での受賞者が出ることを期待している。