ジョンとリックの会話

科学的発見というのは、別々の研究室から同時に同じ雑誌に報告されることということが時々ある。私は、アカデミックの人間ではないので、その裏側にどのようなことが起こっているのかはわからない。ただ、こんな会話が行われているとしたら。。。

引用元
www.med.yamanashi.ac.jp/clinical/.../0906%20journal.pdf

ところで一流の雑誌には、時に同じ内容の論文が2つも3つも同時に掲載されることがある。同じことをやっている
研究グループが同時に投稿し、同時にアクセプトされる可能性は低いから、そこには何らかの政治的なネゴシエーシ
ョンが働いているはずだ。例えばこんなふうに。

Author (以下、A)「ハロー、ジョン、調子はどうだい?」
Editor(以下、E)「やあ、リック、すばらしいよ。毎日が楽しくてたまらない。とくに朝なんかピンピンに元気だ。」
A「そうかい。そりゃあよかった。うらやましいよ、まったく。ところでさ、ボビーの論文、いまどうなってる?」
E「ああ、あれね。エイドリアンのところに回したよ。たぶんminor revisionだな。エイドリアンはボビーのダチだ
しね。」
A「そうか。じゃあ、急がないといけないな。実はさ、君も知っての通りおれも似たような事しててね。君のところ
に投稿しようと思ってるんだけど、うまくやってくれるかい?」
E「いい仕事だろうな。」
A「そりゃあ、もちろん。」
E「そうか。わかった。ほかならぬ君の頼みだ。なんとかしよう。そうだな、それじゃあ、クリスとケイトのところ
に送ることにするよ。たしか君とは仲良しだったな。」
A「ああ、彼女たちとはポスドクの頃、いろいろあってねえ。ふっふっふ。」
E「ふっふっふ、か。おやすくないねえ。じゃあ、厳しいコメントはないだろう。」
A「ありがとう。くれぐれも糞ボビーとアホのエイドリアンなんかには送らないようにね。」
E「わかってるって。そんなことするもんかい。・・・・ところでさ、人生持ちつ持たれつ、って言葉があったよな。」
A「・・・・ある、な。」
E「実は俺んとこの出来そこないのポスドクの論文がさ、なかなか通らないんだよ。君んとこのジャーナル、レベル
低いから何とかならないかい?」
A「レベル低い、とはひどい言い草だね。でもその通りだ。わかった。投稿してくれ。回したってほとんどまともに
読まないジェイムス爺さんのとこに送っとくよ。あの爺さんだったらOKだ。こないだ媚薬を嗅がせておいたから、
おれの言いなりだよ。」
A「ありがとう。これで一件落着。」
E「だな。」
A「ボビーの論文と、同じ号に載せてくれるよな。」
E「きみも心配性だな。言わなくたってわかってるって。君と俺の仲じゃないか。ひとに言えない悪いことだって・・・
さんざん一緒にやってきただろ。」
A「ヒッヒッヒッ」
E「フフフフフ」
A「ありがとう。論文が出たら一杯おごるよ。」
E「まあ、そんなに気をつかわないでくれ。お互いさまだ。でも3杯くらいは奢ってもらってもいいかな。」
A「それじゃあ、またいずれ。良い週末を。」
E「君も楽しい週末をな。」

というような経緯で、今回の『Cell』にはめでたく似たような論文が同時掲載と相成った。『Cell』では時々あるパターンである。

もちろん、上に引用した会話は、想像上の話なのだと思う。
とはいえ、科学の進歩には、三面記事的な要素も結構多く含まれているのは事実である。科学的発見に人間的なエピソードがスパイスとして加わると、第三者としては、とたんにおもしろく・興味深くなるものだ。