頭って、薬でよくなるの?

海外の学生に、「頭がよくなる薬」というのが流行しているそうだ。

「スマートドラッグ」や「ヌートロピクス(Nootropics)」などと呼ばれており、代表的なものとしてピラセタムという物質がよく服用されているようだ。このピラセタムは、厳しい規制がかけられているわけではなく、海外では割と手軽に入手できる薬剤とされている。

もともとピラセタムは、脳機能が低下したヒトの治療に用いられる脳機能改善薬として開発された。脳の血流量をあげたり、脳の酸素消費量を上げたりすることで、神経細胞の活動を活発にさせるというのが、想定されている作用メカニズムらしい。

しかし、この手の脳機能改善薬というのは、薬理効果をヒトできちんと示すことは大変難しい。かつて、日本では、一度は承認され、患者に使用された脳機能改善薬が、後に再評価を受けた際に効果を再現することができず、発売中止となったことがあった。

このときは、最初に承認する際の臨床試験の効果判定に問題があった(専門用語でいうと、効果の統計処理で多重性の考慮がなされていなかった)ことがわかっている。実験の組み方、薬効を示すパラメータの選択、どれだけの変化量をもって脳機能改善と考えるか、など、いろいろな要素が複雑に絡みついているだけに、簡単に効果があると判断することはできない。

機能低下の改善を判断するだけでも難しいのに、普通の人の学習効果を更に改善させるということを証明するのはもっと難しいと思われる。実際、普通の健常人に対して、ピラセタムが脳機能の更新(たとえば学習効果の向上作用を有するのかどうか)については、きちんとした科学的証拠は乏しいとされている。

もともと、薬を飲んで成績をよくしようとする考えの学生は、勉強を楽してしようと考えているわけで、勉強量自体少ないのが普通のような気がする(偏見?)。学習機能がたとえ更新したとしても、勉強量が少なければ、成績がそれほど上がるとは思えない。薬を飲んで勉強する気になる(これはプラセボ効果かもしれないが)としても、それは学習効果の改善ではなく、あくまで意欲の更新である。

また、もともと勉強量が多い人は、薬を飲んでものまなくても、勉強を続けることで、自然と成績は上がってくるものである。だから、薬の効果を判定することは難しいだろう。

個人的には、薬を飲むよりも学習法を工夫した方が何倍も学習機能の改善効果がある、と思う。そして、「薬で楽して頭をよくしたい」と思ってるヒトは、「薬にもできることとできないことがある」ということを、よく理解する必要があると思う。