タンパク質を経口投与で送り込む方法

タンパク質というのは、基本的に口から飲んでも直接体内へは吸収されない。基本的に、タンパク質は、消化管の中のタンパク質分解酵素によってアミノ酸に分解されてしまうためだ。

ということは、タンパク質分解酵素で分解されないタンパク質は、口から飲んで体内に吸収されるのだろうか?

答えは、おそらくYes。

典型的な例は、狂牛病の原因タンパク質として一時期騒がれた「プリオン」。

狂牛病は、脳の神経細胞が異常化したプリオンによって破壊され、痴呆状態を経て死に至るという病気。このプリオンは、タンパク質分解酵素に対して抵抗性が高く、消化管内ではほぼ無傷で存在すると考えられる。このプリオンは消化管内の免疫細胞に取り込まれ、リンパ管経由で中枢神経系に送られて神経細胞における病態が発現する、とする仮説が有力らしい。

この吸収経路を利用して、薬として有用であるタンパク質を飲み薬として体内に送り込むことが出来ないか?という研究があっても良いのではないかと思う(実際に行なわれていてもおかしくはない)。

現在、タンパク質を用いた薬(抗体医薬、ワクチン、ホルモン類など)は、注射薬での投与がほとんど。注射薬の場合、投与期間をできるだけ少なくするために、作用持続時間を長くするため工夫は行なわれている。しかし、一度副作用がおこったりすると、体内での残留時間が長いため、すぐに薬の副作用を止めるということが出来ない。

そういう点では、飲み薬にすることで、薬の効き方をうまくコントロールできるようにする、という戦略は、医者や患者のニーズに十分適合するのではないかと思う。