タミフル予防投与の実情。

今年の5月、神戸で新型インフルエンザが流行したとき、神戸市の病院の勤務者(医療関係者、病院職員)にタミフルの予防投与が行われた。このタミフル予防投与についての調査結果が公表された。

日経メディカルオンラインより。

5月16日、神戸市で国内初の感染者が確認された後、同病院には、発熱などのインフルエンザ様症状を訴える患者が殺到。十分な感染防止策をとらずに、感染疑い患者と濃厚接触した同病院の職員のうち、同意が得られたものは、オセルタミビルを予防内服した。

同病院薬剤部の中浴伸二氏らは、5月16〜25日までに予防内服の目的でオセルタミビルを処方された274人の職員を対象にアンケート調査を実施。243 人から回答を得た。ちなみに、回答者は全員同病院に勤務しており、職種は医師、看護師、薬剤師、事務職などだった。また、そのうちインフルエンザを発症したり、感染が確定したものはいなかった。

 成人に対する予防の目的で用いる場合、オセルタミビルは1回75mgを1日1回、7〜10日間内服する。しかし、アンケートの結果、10日間オセルタミビルを飲み続けた人は90人程度しかいなかった。1日もオセルタミビルを内服しなかった人は28 人、また約半数が有害事象や必要性を感じないといった理由で、途中で内服を中止していた。

 1日も内服しなかった28人を除く215人のうち、何らかの有害事象があったと回答した人は82人いた。最も多かったのは30人近くが訴えた疲労で、そのほか、下痢、嘔気、傾眠、腹痛、食欲不振、嗜眠、頭痛、不眠症、発熱などが見られた。中には、内服中止後、比較的早期に症状が消失した人もいたが、内服を継続して症状が消失したという人もいたため、これらの症状がオセルタミビルの内服によるものかどうかははっきりしていない。ただし、オセルタミビルを予防内服した際の有害事象について、これだけの規模で行われた調査はこれまでほとんどないため、今後の参考になりそうだ。

有害事象については、プラセボ効果の可能性も考えられるので、多少割り引いて考えるべきだろう。「下痢、嘔気、傾眠、腹痛、食欲不振、嗜眠、頭痛、不眠症、発熱」というのは、薬の副作用の中でもよく見られるものである。

それよりも、気になるのはコンプライアンスの悪さだ。記事中には、「予防投与については同意を得た」と書かれているので、「飲みたくないのに無理矢理処方された」わけではないだろう。有害事象のために服薬を中止したというのはわかるが、「必要性を感じない」とか「1日もオセルタミビルを内服しなかった人がいる」というのは、医療関係者としてはちょっとまずいのではないか。貴重なタミフルの備蓄を、このような形で無駄にするのは非常に気になる。

飲まずに置いておいたタミフルは、実は自分用にとっておいてある、なんてことはない、と思いたいが。